みどころ
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ブルターニュの名を美術史に刻印した画家、ゴーガンの作品12点が集結
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30か所を超える国内所蔵先と海外美術館2館から珠玉の作品約160点を一堂に展示
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西洋だけでなく日本の近代画家たちがとらえたブルターニュの姿も併せて紹介
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見出されたブルターニュ 異郷への旅
ブルターニュ地方が画家たちを惹きつけはじめたのは、19 世紀はじめのロマン主義の時代。第1章は、イギリスの風景画家ウィリアム・ターナーの水彩画やフランスの画家・版画家が手掛けた豪華挿絵本など、19 世紀初めの「ピクチャレスク・ツアー(絵になる風景を地方に探す旅)」を背景に生まれた作品から出発します。章の後半では、ウジェーヌ・ブーダンやクロード・モネら、旅する印象派世代の画家たちがとらえたブルターニュ各地の表情豊かな風景を前に、自然と向き合う画家たちの真摯なまなざしを感じ取ることができるでしょう。
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アルフォンス・ミュシャ
左:《岸壁のエリカの花》 右:《砂丘のあざみ》
1902年 カラー・リトグラフ OGATAコレクション -
ウィリアム・ターナー《ナント》
1829年 水彩 ブルターニュ大公城・ナント歴史博物館
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クロード・モネ 《嵐のベリール》
1886 年 油彩/カンヴァス オルセー美術館(パリ)
ⒸRMN-Grand Palais(musée d’Orsay) / Adrien Didierjean / distributed by AMF -
クロード・モネ 《ポール=ドモワの洞窟》
1886 年 油彩/カンヴァス 茨城県近代美術館
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風土にはぐくまれる感性 ゴーガン、ポン=タヴェン派と土地の精神
ブルターニュ地方南西部の小村ポン=タヴェンは画趣に富む風景、古い建造物や民族衣装を着た人々といった豊富なモティーフのみならず、滞在費やモデル代の安さも手伝って多くの画家を魅了し、早くも1860 年代にはアメリカやイギリス、北欧出身画家たちのコロニーが形成されていました。1886 年、パリでの生活苦から逃れるようにポン=タヴェンへ赴いたゴーガンはこの地を気に入り、1894 年までブルターニュ滞在を繰り返して制作に取り組みます。第2章では、ゴーガンが度重なるブルターニュ滞在において制作した作品12 点(絵画10 点、版画2 点)によって造形表現の変遷をたどります。さらにエミール・ベルナールやポール・セリュジエらポン=タヴェン派の作品も併せて展覧することで、実験的な創作活動の場としてのブルターニュをご覧いただきます。
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ポール・ゴーガン 《海辺に立つブルターニュの少女たち》
1889年 油彩/カンヴァス 国立西洋美術館( 松方コレクション)
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ポール・ゴーガン 《ブルターニュの農婦たち》
1894 年 油彩/カンヴァス オルセー美術館(パリ)
ⒸRMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF -
ポール・セリュジエ 《ブルターニュのアンヌ女公への礼賛》
1922年 油彩/カンヴァス ヤマザキマザック美術館
※展示は5/7(日)まで -
エミール・ベルナール 《ポン=タヴェンの市場》
1888 年 油彩/カンヴァス 岐阜県美術館
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土地に根を下ろす ブルターニュを見つめ続けた画家たち
19 世紀末から20 世紀初頭にかけ、ブルターニュは保養地としても注目されるようになります。画家たちのなかにも避暑のみならず制作のため、パリやその近郊の住まいとブルターニュの往来の末に別荘を構えてこの地を「第二の故郷」とし、絶え間なくこの地を着想の源とした者がいました。第3章では、これらの画家が長期にわたる土地との対話のなかで培ったまなざしの行方を追います。
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モーリス・ドニ《花飾りの船》
1921年 油彩/カンヴァス 愛知県美術館
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シャルル・コッテ《行列》
1913年 油彩/カルトン 国立西洋美術館( 松方コレクション)
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リュシアン・シモン《曲馬場》
1917年頃 油彩/カンヴァス 大原美術館
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アンリ・リヴィエール
左:連作「時の仙境」より:《満月》
※展示は5/7(日)まで
右:連作「時の仙境」より:《薄暮》
※展示は5/9(火)から
1901年 カラー・リトグラフ 新潟県立近代美術館・万代島美術館
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日本発、パリ経由、ブルターニュ行 日本出身画家たちのまなざし
ブルターニュ地方が西洋絵画の主題として定着し、多様な表現の受け皿となっていた19世紀末から20世紀のはじめ、つまり日本における明治後期から大正期にかけて、芸術先進都市パリに留学していた日本人画家・版画家たちもブルターニュという「異郷のなかの異郷」へ足を延ばし、その風景や風俗を画題に作品を制作していました。
第4章では、これまであまり注目されてこなかった彼らのブルターニュ滞在に光をあてる新しい試みとして、黒田清輝や久米桂一郎を筆頭に、山本鼎や藤田嗣治、岡鹿之助らが描いたブルターニュの風景や風俗をご覧いただくとともに、彼らの同地での足跡をたどります。-
黒田清輝 《ブレハの少女》
1891年 油彩/カンヴァス 石橋財団アーティゾン美術館
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藤田嗣治 《十字架の見える風景》
1920年頃 油彩/カンヴァス 岐阜県美術館
©Fondation Foujita / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2023 E5061 -
久米桂一郎 《林檎拾い》
1892年 油彩/カンヴァス 久米美術館
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山本鼎 《ブルトンヌ》
1920年 多色木版 東京国立近代美術館
※展示は5/7(日)まで
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ブルターニュとは
ブルターニュってどんなところ?
フランス北西部、大西洋に突き出た半島を核とするブルターニュ地方は、古来より特異な歴史文化を紡いできました。断崖の連なる海岸や岩が覆う荒野、内陸部の深い森をはじめとする豊かな自然、各地に残された古代の巨石遺構や中近世のキリスト教モニュメント、そしてケルト系言語たる「ブルトン語」を話す人々の素朴で信心深い生活様式 − このフランスの内なる「異郷」は、ロマン主義の時代を迎えると芸術家たちの注目を集め、美術の領域でも新たな画題を求める者たちがブルターニュを目指しました。

※本展では19世紀から20世紀前半の歴史・文化的地域圏に鑑み、ロワール=アトランティック県も含めて「ブルターニュ地方」としています。
「ブルターニュ」のいま
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Tourisme Bretagne「ブルターニュ地方観光局」
公式YouTubeチャンネルや公式ホームページでは自然豊かで風光明媚なブルターニュの魅力や観光情報を紹介しています。
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TBSテレビ「世界ふしぎ発見」(毎週土曜よる9時放送中)
「海と風が織りなす風景 フランス灯台街道」(2020年1月18日放送)にてブルターニュ地方が特集されました。
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ブルターニュ地方の伝統料理「ガレット」
そば粉100%のクレープ
写真:ブルターニュ料理専門店 ル ブルターニュの「トラディッショナル」
(ブルターニュ産アーティチョーク、目玉焼き風タマゴ、ハム、グリーンサラダ、ボルディエ製バター)
※「ル ブルターニュ」さんのミニ情報誌(2023.02)でも展覧会が紹介されました。
( 他にもブルターニュ地方のトピックスが紹介されています。) -
今昔を巡るブルターニュ周辺の観光情報
ブルターニュを含むエリアの今昔をアートで巡る観光情報が公開されています。ブルターニュ公城のあるナントを起点に歴史遺産や現代的文化遺産、芸術、美食、自然を集めてできた”奇跡のルート”を紹介。(2022年1月版)
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地球の歩き方web
「憧憬の地 ブルターニュ」展と「ブルターニュ地方のポン=タヴェン」が紹介されました。